アズと織絵

アズ

イタリア系の貧しい移民でフランスに育ち
9歳の頃火事で家族を亡くして娼館に売られ
14歳の頃、初老の日本人客に会う
一晩抱かれた後、身上げされ養子になり日本へ

それ以降は身の回りの世話のみで体の関係は無く
男は教師らしく日本語をアズに教えて暮らした
アズが19歳になったある日、男の実の娘が訪ねて来た
離婚した奥さんとの娘らしいが都内の大学へ進学するのに都合がいいので
これから一緒に暮らすとの事
男はえらく喜んで、アズはその日に家を出た

適当な電車の最終まで来た所で終電の時間
身一つで駅の前に座っていると散歩していた織絵が声をかける
｢外人さん、観光？｣
アズは顔をあげる
｢きれいな顔してるねー｣

行く所が無いなら家来ていいよと言って
そのまま三年
アズは昼間はコンビニで夜はネット喫茶で家では翻訳のバイトをして
勝手に家を出てしまった男に毎月お金を送っている
いつも、アズと織絵の二人は布団を交互に使うか片方は雑魚寝する
この頃寒い日は二人で抱き合って眠る、恋人のように

織絵が冷たい手をアズの服の中に入れて
暖かいとか言うと、私は冷たいよう
とか
｢アズ｣
そう言って思わず軽くキスをしたら
アズは泣き出してしまう
織絵はオロオロして
ごめん嫌だった？と聞いて
｢どうしてやさしいの｣とアズは言ったけど
どこかの外国の言葉だったので
織絵はわからず
そのまま抱き合ってその日は寝ました